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大阪地方裁判所 昭和40年(ワ)3969号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、(事故の発生) 原告が、昭和三九年二月七日午後一時五〇分頃、前記中小企業団地造成工事現場において、被告藤田組飯場用組立ハウスの組立作業中、事故を起したことは当事者間に争いがなく、<証拠略>によれば、原告は、訴外安本性甲の指揮監督の下に、昭和三九年二月五日から前記場所で組立ハウスの組立作業に従事していたが、前記日時頃、本件組立ハウスの二階屋根の上において、作業場所を換えようと中腰で立ち上がりかけた時、右屋根の1.4メートルの上空を東西に横切つていた六、〇〇〇ボルトの高圧線に頭部を接触させ、感電したことを認めることができ、右認定に牴触する<証拠略>は前掲甲第四号証に照らし採用せず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

さらに、<証拠略>によると、原告は、前記感電により頭頂部に電撃傷を受け、事故当日から原告主張の期間、枚方市民病院および大阪医科大学附属病院に入院し、同附属病院で数回の手術を受けたこと、右を退院後、原告は、北野病院に一回治療で通院し、昭和四二年三月二四日に労働者災害補償保険の関係で大阪赤十字病院で診断を受けた時、右受傷部位は治癒していないと言われたので、その後、同病院皮膚科等において掻把創業二次感染(頭部)の療養を受け、昭和四三年三月九日に治癒の診断がなされたこと。原告は、本件事故により、頭頂中央に8×13センチメールの禿が、その中央部に6×6センチメートルの頭蓋骨欠損が、頸部中央後部に電撃の瘢痕が残り、頭部に著しい醜状を残したこと、右について神経病学的、精神病学的著見は認められないが、右頭蓋骨欠損は原告の日常生活に多大の障害と、職種の選択にある程度の制限を加えるものであることを認めることができ、右認定を覆すに足る証拠はない。

三、(訴外安本性甲、同川津金夫および原告の過失)

本件の如き組立ハウスの組立工事において、現場で作業員を指揮監督する立場に在る者は、右作業員が安全にその工事を遂行し得るよう万全の措置をとる注意義務があるものというべきところ、<証拠略>によれば、訴外安本性甲は、本件事故の前日、本件組立ハウス二階屋根の上空に本件事故の原因となつた高圧電線があることに気付いたが、作業員に素手で電線を取扱うことを止めたのみで、それ以上に電線に作業員が接触することによる危害を防止する措置をとらなかつたことを認めることができ、この事実と前認定の事実によると、訴外安本性甲は、原告を指揮監督するものとして、高圧架空電線下の本件組立ハウス二階屋根の上において作業する者が、当該充電々線に身体を接触し感電する危険を防止する措置をとることなく、漫然原告にその作業をさせたことにより本件事故を惹起したものであり、同訴外人に右感電の危険防止義務を怠つた過失があつたことは明白である。

次に、訴外川津金夫が被告藤田組の従業員であつたことは原告、同被告間に争いがなく、<証拠略>によると、右川津金夫は、訴外安本性甲に対し、現場において地面に小さな杭で四角の標を付し、本件組立ハウスの設置場所を具体的に指図したこと、右安本性甲が右指定場所に本件組立ハウスを建て始め本件事故前日に至り、その骨組が出来あがつたとき右川津金夫は、その二階屋根上空を横切る大小四本程の電線の存在に気付き、その危険を感じて訴外住成電気に調査を依頼したが、それ以上の措置はとらなかつたことを認めることができ、右認定を覆すに足る証拠はない。そして、前掲各認定事実によると、被告藤田組は被告日東工営に対する直接の注文者ではなかつたが、被告藤田組の従業員訴外川津金夫が被告日東工営の被用者訴外安本性甲に対し高圧架空電線下に本件組立ハウスの具体的設置場所を直接に特定指定し、かつ、その後、その場所が危険であることを容易に認識できた状況の下にあつたのであるから、右川津金夫は、本件組立ハウス二階屋根の上で作業する者が右高圧電線に接触感電する危険を予見し、右危険防止又は回避の措置をとる義務があつたところ、これを怠り放置したことにより本件事故を惹起せしめたものであり、右川津金夫ひいては被告藤田組に本件組立ハウス組立工事の注文者としてその指図に過失があつたといわなければならない。

被告らは、本件事故はもつぱら原告の自己過失によるものと主張するが、被告らの各被用者に過失が認められること前記のとおりであり、右被告らの主張は採用できない。しかし、<証拠略>によれば、原告は、本件事故当時、感電防止等のための保安帽を着用しないまま、本件屋根の上で作業していたことを認めることができ、右事実に前認定の本件事故の状況等を参酌すると、原告にも本件事故を防止ないしは回避する義務を怠つた過失があつたといわなければならない。そして、右認定のような当事者間の過失の態様を比較考量すれば、その過去の割合は原告につき三、被告らにつき七と認めるのが相当である。(中島恒 吉田秀文 畑瀬信行)

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